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旧中村家住宅(大町市)概要: 旧中村家住宅は長野県大町市美麻に屋敷を構えている古民家です。
中村家は慶長19年(1614)に上方から当地に土着してから力をつけ、初代彦左衛門が松本藩から12石5斗余の本百姓として認められました。
2代目彦右衛門は組頭、3代目佐五右衛門は庄屋になるなど当地に大きな影響力を持ち、その後裔も村役人を歴任しました。
中村家は庄屋や組頭など村役人を歴任した上層農家だった事から、松本藩の藩士など身分の高い人物とのやり取りが行われた為、中村住宅主屋の向かって左側が、それらが利用する接客空間として整備されました。
その為、左側には身分が高い人物しか利用出来ない式台付の玄関が設けられ、それに続く中の間は打合せに来た藩士の御供の控えの間として利用され、槍掛など当時の名残が見られます。
中の間の奥に配された奥座敷は身分の高い人物が利用した為、床の間や脇床、長押、棹縁天井、棹欄間など格式の高い意匠が採用されています。
又、家人が利用した茶の間、小座敷と、接客空間の間には、「入側」、当地方では「ゆりか」といわれる廊下のような空間があり、武家と農民が利用する空間が明確に分けられていた事が窺えます。
向かって右側半分は土間空間で、「馬屋」や「くらおきば」、「おおど」、「台所」、「おかきば」などで構成されていました。
旧中村家住宅が屋敷を構える旧美麻村は村名の由来になった、麻をはじめ、楮や莨、桑などの生産が盛んな地域で、中村家は麻の集荷・出荷を生業とし、「おかきば」ではその作業が行われていました。
中心部分は家人に生活空間で、当初は居間も土間に茣蓙を敷いた土座であった事から古式の形式、構造が見られます。
現在の旧中村家住宅主屋は、元禄11年(1698)に建てられたもので、木造平屋建て、桁行14間(25.5m)、梁間6間(10.9m)、建坪84坪(約278u)。
屋根は茅葺、寄棟、大型な直屋形式で千見村出身の九平が大工棟梁として建築を手懸けています。
旧中村家住宅土蔵は6代武左衛門の代の安永9年(1790)に建てられたもので土蔵造2階建て、切妻、茅葺、桁行6間、梁間4間、佐野村出身の政右衛門が大工棟梁として建築を手懸けています。
近年、道路拡幅工事の為に同一敷地内から現在地に曳き屋移築されています。
建築年代が明確な土蔵建築の中では長野県内でも古いほうにあたり、仕上げも中塗り仕上げと質素で古式の工法を継承しています。
又、敷地内には十王堂があり、内部には十王像や地蔵菩薩像などが安置され、当時の民間信仰の名残が見られます。
旧中村家住宅の主屋も中村家に伝えられている「年代記」によって建築年や棟梁などの詳細が記され、建築年代が明確な民家としては長野県最古、茅葺民家の中では最大級とされます。
旧中村家住宅主屋は大変貴重な事から、敷地内にある土蔵と共に平成9年(1997)に国指定重要文化財に指定されています。
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