水場(奈良井宿)概要: 奈良井宿の中には現在、高札場(宮の沢)や鍵の手、池の沢、中町(横水)、下城、下町の6箇所の水場があり、生活用水や火災時の延焼を防ぐ為に利用し、何れも現役で水神が祭られ整備が行き届いています。各町内や、町の重要な場所に水場を配置し、当然ですが水場は街道の山側にあり、この宿場には水が豊富なことを物語っています。単純に飲料や洗物をするだけでなく、利用者の憩いの場や情報交換の場となり町を構成する意味でも重要な要素の1つです。又、建物が密着している中、水場は僅かながら空間を空ける事が出来るため、火災の延焼防止にもなっていました。
宮の沢の水場は奈良井宿の鎮守である鎮神社と幕府や代官が発布した法度や掟書を掲げた高札場の中間に位置し、鎮神社の手水舎的な雰囲気を持っています。屋根は町並みの修景計画に基づき、切妻の石置屋根で、防災の為に複数のバケツが吊り下げられています。又、水場の背後には二十三夜搭や、地蔵尊、庚申塔など多くの石仏や石碑が安置されており、日常の素朴な信仰の場になっていたようです。鍵の手の水場は奈良井宿の防衛施設の1つである鍵の手、所謂「枡形」に位置し、江戸方向に向う通行人にとっては一番目に付く水場です。鍵の手には双体道祖神や荒沢不動尊などもあり意識的に公共の場として整備されたのかも知れません。
池の沢の水場は規模が小さく、町屋の前にチョコンと設置されている事から私設のような雰囲気があり、背後には水神が祭られています。横水の水場は法然寺参道近くに位置し特に中町の住民が利用したようで、他の水場と比べると水槽が大きく見栄えのする水場です。下城の水場は、地名から戦国時代の領主奈良井氏の居城だった奈良井氏館の下に位置していた思われます。水槽は丸太を切り抜き内部をステンレス製にしています。下町の水場は奈良井宿の中で一番北側に位置し、石積みの水槽が哀愁を感じます。
奈良井宿の水場の水質は一般社団法人長野県薬剤師会のサイトの水質評価によるとカルシウムイオン9.5mg/l、マグネシウムイオン2.5mg/l、ナトリウムイオン2.7mg/l、カリウムイオン0.40mg/l、炭酸水素イオン37.6mg/l、塩化物イオン1.0mg/l、硫酸イオン3.5mg/l、硬度34mg/lの評価を得ています。
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