松尾寺(安曇野市)概要: 医王山常楽院松尾寺は長野県安曇野市穂高有明に境内を構えている高野山真言宗の寺院です。松尾寺の創建は不詳ですが、伝承によると白鳳2年(651)、近江の湖水から出現した薬師如来像を本尊として祭ったのが始まりと伝えられています。中世に入ると安曇野地域を支配した仁科氏から庇護を受け享禄元年(1528)に仁科盛政が中興開基となり現在の薬師堂が造営されました。
ただし、当時は松尾寺の境内に近い古厩城の城主古厩氏(仁科氏庶流)の影響下にあった事から古厩平兵衛盛兼が実際の中興開基だったと推定されています。江戸時代に入ると松本藩からの庇護を受け寺領10石が安堵されていました。明治時代初頭に発令された神仏分離令により一時廃寺となり荒廃(松本藩の廃仏毀釈は特に厳しく多くの寺院が廃寺に追い込まれた)、明治25年(1892)に再興された際、醍醐寺三宝院の末寺から高野山金剛峯寺の末寺となり高野山真言宗の寺院となっています。
現在の松尾寺本堂(薬師堂)は桁木造平屋建て、桁行3間、梁間3間、寄棟、銅板葺き、平入、外壁は真壁造板張り素木、軒を大きく張り出し5間堂のような形式を持っています。舟肘木や地垂木、蟇股、鬼板などの細部は室町時代後期の特徴や地方色独特も見られ大変貴重な事から昭和34年(1959)に国指定重要文化財に指定されています(同年代に造営され大町市に境内を構えている盛蓮寺観音堂と類似しています)。松尾寺仁王堂(仁王門)は明治時代に廃寺になる以前からの建物で、切妻、桟瓦葺き、三間一戸、八脚単層門、内部には仁王画像が掲げられています。山号:医王山。院号:常楽院。宗派:高野山真言宗。本尊:薬師如来。
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