玄蕃之丞・概要: 玄蕃之丞とは桔梗ヶ原(長野県塩尻市:市内の中北部、奈良井川と田川に挟まれた平坦な台地)に住んでいた狐の大親分で、人間に対して悪戯する事が大変好きだったとされ桔梗ヶ原周辺では数多くの伝説や伝承が残されています。当時の桔梗ヶ原は人気の無い原野で、そこを通る人達は精神的に不安定になり、幻覚や幻聴を聞き、その話に尾鰭が付き流布すると、さらにそれを信じた人達が恐怖によりささいな事も玄蕃之丞とその一味の仕業と思い込んだと思われます。
木曽路(中山道)の贄川宿(長野県塩尻市贄川)では玄蕃之丞に纏わる次のような伝説が残されています。玄蕃之丞は度々、仲間や部下達と共に大名行列に化け、民衆が下に出る事を優越感に浸っていましたが、その内手口がばれ、反対に嫌がらせを受けたりもしました。ある時、大名行列が贄川宿を通過した際、住民は玄蕃之丞一味の悪戯と思い、行列に対して悪態をつくと、実は本物の大名行列だった為、重い処罰を受けました。宿場の住民はこの事態を重く考え、今度、玄蕃之丞が大名行列に化けたら、一網打尽にする事を画策しました。その策は口が狭く大きな壺に狐の大好物である鼠の天麩羅を沢山仕込んで宿場のいたるとことに配置するもので、住民達は何もなかったように演技して逆に玄蕃之丞達を騙そうとしました。早速、何時ものように狐が化けた大名行列が贄川宿の中に入ると、大好物の鼠の天麩羅の匂いに我慢できず、我先にと壺の中に入り天麩羅を腹いっぱいに平らげました。すると、腹が膨らんだ狐達は壺から出られなくなり、一匹残らず住民により捕縛され、惨めな最後を遂げたと伝えられています。
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