木曽路:寝覚の床・浦島太郎伝説

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浦島太郎・概要: 浦島太郎の昔話を要約すると概ね次ぎのような話です。

亀を助けた浦島太郎は竜宮城に招待され、数日間の接待を受けました。我に返った浦島太郎は、決して開けてはいけないと言われた玉手箱を御土産に、地上に戻ると数百年の時間が流れ去っていました。既に両親も死に、誰もを知る人がいなくなった、浦島太郎は寂しくなり、遂に玉手箱を空けてしまうと、白い煙が立ちこめ、太郎は白髪の老人に姿を変えました。

浦島太郎の昔話は全国各地に残っていますが、その原型の1つとされるのが8世紀に成立した「丹後国風土記」に記載されている「筒川嶼子 水江浦嶼子」で、同じような話が「日本書紀」や「万葉集」にもあり、8世紀には既に似たような話が流布していた事が窺えます。「丹後国風土記」のものを概略すると概ね次ぎのような話です。

丹後国風土記: 雄略天皇の御代に日下部の首の始祖で容姿端麗だった水江浦嶼子(浦島太郎)は小船で海に出て釣りをしたものの3日間一匹の魚も釣る事が出来ませんでした。すると、突然、5色の色に輝く亀を釣り上げ、不思議と思いながらも船の中にその亀を置いて翌朝、目を覚ますと、見た事もない絶世の美女が現れました(亀が美女に姿を変えた)。嶼子は、ここは海の上で人が住む陸地からは遠く離れているのにどうしてあなたここにいつのかと問うと、美女は、素晴しい男性(嶼子)が近くに来たので、仲良くなりたいと思い飛んで来ましたと答えました。嶼子は、飛んできたとはどういう意味ですかと質問すると、美女は、私は仙人が住む天界からあなたに会う為に雲に乗ってやってきました。どうか仲良くしてくださいと答えました。嶼子は、それは私も望むところです。と答えると、美女は、それでは2人で仙人が住む蓬山に行きましょうと言い、嶼子を深い眠りにつかせました。

嶼子が目を覚ますと、海中の大きな島に着き、今まで見た事も聞いた事のない景色が広がっていました。2人は手を繋ぎ、大きな屋敷の門まで歩いていくと、美女は少しここで待ってくださいと、嶼子をここで待たせ、1人で門の中に消えていきました。すると、7人の子供達が現れ、この人(嶼子)が亀姫(嶼子をここまで連れて来た美女)の夫になる人だ、と話し、さらに8人のが現れると同じ事を言い、その内、女娘(亀姫=美女)が戻ってきました。嶼子は子供達の事を聞くと女娘(亀姫)は、7人の子供は昴星人(プレアデス星団=牡牛座の散開星団からやって来た宇宙人)、8人の子供は畢星人(牡牛座からやってきた宇宙人)だから心配は要りませんといいました。屋敷の中では女娘(亀姫)の両親が出迎え、人間界と仙人の住む世界との違いを話し、人と仙人が交わるのを大変喜びました。すると、祝宴が始まり、たくさんの料理が並べられ、女娘(亀姫)の兄弟姉妹や幼い娘達も集まり、人間界では見た事もなり美しい仙女達の美しい歌や踊りを堪能し、黄昏時になると皆それぞれ帰っていきました。そして、2人きりになると、肌を寄せ合い、その夜2人は夫婦となりました。

それから3年、仙界で楽しく暮らしていましが、突然、望郷の念と両親に会いたくなった嶼子は体調を崩し、思い悩んでいると、それに気遣った女娘(亀姫)がその訳を聞くと、嶼子は人間界では昔から生まれ故郷を懐かしむもので、狐すら故郷の方角を向いて死ぬと云われています。と答えると。その気持ちを察した女娘(亀姫)は、あなたは人間界に戻りたいのですね、と答えました。すると、嶼子は愛する女娘(亀姫)の前で軽々しく言いたくは無いのですが、どうしても望郷の念を押える事が出来ませんと答えました。女娘(亀姫)は涙を溢しながら、私とあなたは金石と同じ様に心も体も1つになり、その気持ちは決して変わるものでは無いと信じてきたのに、その私を捨てるのですね、と答え、2人で手を繋ぎ、周囲を歩きながら今後について話し合いをし、別れる事を決めました。別れの日、女娘(亀姫)や両親、親族達が集まり、涙を堪えながら送別され、女娘(亀姫)は玉匣を嶼子に手渡すると、この匣を開けない限り又再開する事が出来かも知れません、それまで私を忘れないで欲しいと告げ、二人は別々の船に乗り仙界を離れました。

嶼子は船の中で再び長い眠りに付き、目が覚めると、既に故郷である筒川が目の前にありました。しかし、故郷ではあるものの、村の雰囲気が一変していた事から、自分の家の事について村人に尋ねると、逆に村人は、あなたこそ誰ですかと尋ね返し、話の理解が進むと、村人はそいえいば古老から300年も前の昔、水江浦嶼子(浦島太郎)という人が海に魚を釣りに出たまま、帰らなかったという話しを古老から聞いた事がある、と語りました。その話しを聞いた嶼子は300年経った事に悟り、呆然として村中に自分の痕跡を求めて歩き廻り1月経つと、当初は神女(亀姫)に会いたいが為に玉匣を撫でていましたが、何を思ったのか約束を忘れ玉匣開けてしまいました。すると、一瞬、芳しい豊かな匂いが立ち込め、神女(亀姫)の存在が近くに感じとれたと思いましたが、その匂いが消えると共に、約束を破った事でもう神女(亀姫)と逢う事が出来ないと悟り、泣いて辺りをうろつく事しか出来なくなりました。

以上、丹後国風土記に記載されている浦島太郎伝説の原型になったと思われる話の概略ですが、現代人が思っている浦島太郎の伝説や昔話とは、題材は同じようですが、印象がやや異なり恋愛物やSFチックに描かれているようにも感じます。読み手によっても解釈が異なると思いますが、素直に詠むと、偶々宇宙船で地球に近づいた、宇宙人である亀姫が、美男子である水江浦嶼子(浦島太郎)に一目ぼれし、嶼子を口説いて、自分の住んでいる惑星まで片道150年かけて連れ帰り(その間、嶼子は眠っていた)、結婚生活3年目にして別離を決意し、嶼子は再び長い眠りに付き150年かけて地球の故郷に戻ったという話しが大筋です。竹取物語でも月の住民だったかぐや姫が最後に月に帰る物語で、当時の宇宙観が描かれている作品の1つとなっています。

寝覚の床

寝覚の床: 寝覚の床では大きく2つの浦島太郎伝説があり、1つは亀を助けた浦島太郎が乙姫(助けられた亀)の誘いにより竜宮城に案内され、竜王から篤いお持て成しを受け、数日後、ふと故郷を思い出し、帰郷の意を竜王に伝えると、竜王から「弁財天像」と「万宝神書」と呼ばれる秘伝書、絶対に開けていけない「玉筐」を御土産にもらい、故郷に戻りました。すると、そこは故郷であって故郷でない不思議な場所で、村人に尋ねると、300年前に浦島太郎が消えて両親も悲痛な思いで亡くなったという話しを聞かされました。浦島太郎は深く悲しみましたが、とりあえず「万宝神書」を紐解き解読すると、自由に空を飛びまわる方法と延命長寿の効き目がある秘薬の製造方法だけは理解する事が出来ました。浦島太郎は飛行術を会得すると、日本中飛び回り、一番竜宮城に似たこの地(寝覚の床)が大変気に入り、住み着くようになりました。それから暫くすると、住民とも仲良くなり竜宮城での生活などを話していると、話しの流れで「玉筐」を見せる事となり、竜王との約束を破り「玉筐」を開けてしまいました。すると、箱の中から白い煙が立ち上がり浦島太郎を包み込むと300歳はなろうかという老人に姿を変えました。浦島太郎は飛行術が使えなくなり、已む無く、この地で延命長寿の薬を売っていましたが、やがてその姿を見る人もいなくなりました。ある時、村人が何時も浦島太郎が釣りをしていた場所に行って見ると「弁財天像」と「釣竿」だけが残されていたので、一宇を設けてそれらを奉納したと伝えられています。この時設けた一宇が現在の寝覚山臨川寺の前身とされています。

もう1つの伝説は、略同じ内容ですが、上記のように浦島太郎が飛行術により空から「寝覚の床」を探し出したのでは無く、偶々、木曽路を歩いていた際に発見したとされ、玉手箱を開けた事で、300歳の老人となり、改めて夢から目が覚めたので、ここを「寝覚の床」というようになったと伝えられています。

丹後国風土記と一般的な浦島太郎の「おとぎ話」や「昔話」、そして「寝覚の床」での伝承と比べる差違があって興味深いところです。丹後国風土記の宇宙船を思わせる記述は、「寝覚の床」の飛行術や延命長寿の薬は似たような印象を受ける一方、話の筋としては一般的な「おとぎ話」と「寝覚の床」の伝承が似ている点が多い事が分かります。浦島太郎の「おとぎ話」や「昔話」は室町時代に成立している事から、丹後国風土記を知っている室町時代以降の人物が、延命長寿を歌う薬を木曽路の上松周辺で販売する際、自分を浦島太郎に見立てて、この話を流布したとも考えられます。

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木曽路:歴史・伝承・伝説・民話・昔話
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※「木曽路(中山道):歴史・伝承・伝説」は「郷土資料辞典」、「日本の城下町」、「観光パンフレット」、「観光地案内板」、「関係HP」等を参考にさせていただいています。ただし、推論、私論が多い為、参考にする場合は自分で現状や資料などで確認してください。リンクはフリーですが写真、文章の利用は許可しませんので御理解の程よろしくお願いします。